Project Storyプロジェクトストーリー

PROJECT04 / 産機・環境システム事業部(産業用機械)

日中共同で挑んだ自動電線処理機の
新機種開発プロジェクト

「2021年春、産機システム事業部は自動電線線処理機(電線を切断し、端子を自動で圧着する機械、以下 線処理機)の新モデルとして「TRD602」を発売。開発が始まった2020年、コロナ禍で海外渡航が制限される中、日本と中国の2拠点でコミュニケーションを取りながら進められました。開発に関わった技術者たちは、この壁をどのように乗り越えたのでしょうか。そして、このプロジェクトは、新明和にとってどのような未来への一歩となったのでしょうか。

納入事例
https://www.shinmaywa.co.jp/products/wire-processing/news/20210310-01.html
Member

産機システム事業部
線処理機本部
技術部

I.H.

当時入社23年目

本プロジェクトにおける役割
チームリーダーとして計画立案、仕様および設計方針の策定、メンバー指導

産機システム事業部
線処理機部門
上海 技術部 副部長

K.R.

当時入社21年目

本プロジェクトにおける役割
ソフトウェア開発サポート、中国開発拠点からの情報提供
  • ※記事の記載内容は、インタビュー取材時点のものとなります。

01プロジェクトのはじまり

世界的な電線需要の増加で線処理機の性能向上が急務に

  • ― 「TRD602」の開発プロジェクトが始まった背景を教えてください。
  • I.H.

    「TRD602」は主に家電・デジタル製品といった一般消費者向け製品の製造用に開発されたモデルです。前身モデルは開発から20年以上が経っており、機能や操作性の面でアップデートが求められていました。営業からも「競合は新しい機種を出している」という情報が寄せられ、民生品の市場を守り続けるためにも後継機の開発が迫られていたのです。

  • K.R.

    当時、中国や東南アジアなどの新興国市場ではデジタル製品や自動車の需要が拡大しており、そこに組み込む電線の需要も増加していました。同時にこれらの国々は人材不足にも悩んでおり、線処理機にも加工能力や安定性の向上が求められていました。

  • I.H.

    これらのニーズに応えるため、開発にあたっては時間あたりの処理本数の増加やシール加工などの機能追加、直感的に操作できる画面の設計など、前機種にさまざまな改良を加える必要がありました。また、20年以上前のモデルだと内部の制御基板や電子部品の型も古いため、調達がだんだん難しくなってきます。これらを最新の部品に置き換える意味でも、後継機の開発は避けられないものでした。

02課題への取り組み

プロジェクト開始から間もなく新型コロナウイルスが襲来

  • ― 開発を進める上で課題や障壁になったことを教えてください。
  • I.H.

    最大の問題は、プロジェクトが始まってすぐに新型コロナウイルスの感染拡大が起こったことです。このプロジェクトは日本で全体的な設計方針を立て、試作機の製造は中国で行う形で進めていたため、渡航できなくなり、すべてのコミュニケーションをリモートで行うことになったのは想定外でした。

  • K.R.

    TRD602のプロジェクトは新製品を中国で一から開発する初めての試みでした。また、新機種はC++やC#などの新しい言語を使った開発環境に変わったため、日本からリモートで指導を受けながらソフトを開発する必要がありました。私自身も、入社20年以上のベテランとはいえゼロからの勉強となり、日本のエンジニアに指導してもらいながら必死に認定を取りました。新しいコンピュータ言語を学ぶ良い機会になりましたが、リモートでは理解しづらい場面もありましたね。

  • I.H.

    対面でコミュニケーションが取れない一方、コロナによって世の中全体の動きが止まったのでこのプロジェクトに専念できた側面もあります。開発メンバーに入社2~3年目の若手を何人か登用し、ベテランがつきっきりで指導しながら経験を積んでもらう機会にすることができたのは、良かったですね。

03乗り越えた瞬間

使えるツールをフル活用して独自のリモート環境を整備

  • ― 渡航制限の壁をどのように乗り越えたのでしょうか。
  • I.H.

    もともと中国で2台の試作機を製造し、日本と中国それぞれで検証を行う予定でしたが、実物がこちらにいつ届くかが読めない状況でした。また、当時はまだリモートで打ち合わせできる環境が整っておらず、日本側から指示が出しづらい状況が続いていました。

  • K.R.

    今のように気軽にリモート会議ができる状況ではなかったので、動画を送るなど、使えるツールをフル活用して状況を伝えていました。実物がないと検証が難しいものはスローモーションカメラで撮って送る、といった工夫をしていましたね。

  • I.H.

    徐々にこの連携方法にも慣れていき、プロジェクトは当初の計画からさほど遅れることなく進んでいきました。中国では部品の調達や機械の組立は割とスピーディーに進むので、今回の試作機の製造も早かった印象があります。また、設計図から装置の動作をシミュレーションできる独自の開発基盤を生かし、密にコミュニケーションを取りながら進められたお陰で、高品質な設計となり全体的に短い期間で完成まで到達したと思います。

  • K.R.

    渡航できない状況を逆手に取り、リモートでも円滑に検証できる方法を生み出したことや、このプロジェクトに集中できたことで、結果的にスムーズな開発になったと思います。2021年の春には展示会が控えており、そこに間に合わせるために日中が協力してミッションを達成できたことは、その後の開発方法を考える上でも良い事例になりました。

  • I.H.

    コロナ禍という逆境の中で、若手メンバーが自発的に動くようになったことも大きかったです。対面でのコミュニケーションが制限される中、デジタルに強い若手メンバーが「仕事が進みやすくなるように」と自らチャットシステムなどの環境を構築してくれました。一つの開発目標に集中できたことも相まって、私が指示を出さなくても、彼ら自身が自発的に開発期間の遵守や品質向上に向けて動くようになっていきました。ピンチの状況下で、若手メンバーが主体的にプロジェクトを牽引するまでに成長してくれたことは、このプロジェクトにおける最高の成果だったと感じています。

04ミッションコンプリート

リモート環境を生かし、日中共同開発の可能性が広がる

  • ― このプロジェクトを経て得られたものは何でしょうか。
  • I.H.

    日中の2拠点で連携しながら新製品を開発する事例ができたことには大きな意味があります。コロナ禍で行き来ができなかったので、リモートでの開発に早くから慣れることができたのも良かったと思います。

  • K.R.

    TRD602は「前機種よりも操作性が良くなった」とお客様から良い評価を得ていることをサービス担当者から聞きました。会社にとっても良い開発事例になりましたね。この経験を生かし、現在はより革新的で規模も大きい共同開発プロジェクトが進んでいます。日本と中国、それぞれの得意な部分を生かして開発を進める体制ができつつあります。

  • I.H.

    そうですね。中国で開発するメリットは部品調達や組立が非常に速いことです。「とりあえず作ってみよう」というマインドで進めてくれるので、スピード感が求められる部分を中国に任せられるのは心強いですね。また、線処理機はさまざまな国で販売されているので、各国のニーズに合わせてローカライズする必要があります。その点、中国で売れる仕様や価格帯を熟知している現地メンバーとタッグを組んで開発できるのも大きなメリットです。

  • K.R.

    私個人にとっても、このプロジェクトを通じて新たな開発環境でソフトウェアを構築できたのは良い経験になりました。中国ではEVやAIロボットの普及で今後も新たな線処理のニーズが生まれるので、それに応えられるよう、さらに高性能かつ高品質な線処理機を開発していきたいですね。

  • I.H.

    現在はソフトウェアの開発環境も進化しており、従来のようにハードが組み上がってからソフト設計を考えるのではなく、同時並行で開発できる技術基盤があります。この点は業界の中でも私たちがリードしていると思います。また、このプロジェクトでは若手のメンバーがリモート環境をうまく活用して積極的に開発を前に進めてくれました。このような積極性と充実した開発環境を生かして、今後もより良い製品開発に取り組んでいきたいと思います。

  • K.R.

    線処理機に関しては、今後も日本からの技術サポートを受け、日中で協力しながら新たな機種を開発していきます。また、この製品はアメリカやメキシコ、東南アジアなど世界各地で販売されています。そのため、グローバルに活躍するチャンスがあり、海外経験を積みたい人にはとても適した事業部だと思います。