PROJECT03航空機(US-2)

構想から納入まで約10年、
「US-2型救難飛行艇」が大空を飛んだ瞬間に流れた涙。
すべての苦労は、達成感に変わった。

  • 設計
    杉本 直彦
    航空機事業部 技術本部
    ※所属は当時のもの

    US-2型救難飛行艇の開発当時は構造グループで、機体の設計荷重の算定と構造強度の計算を主に担当。防衛省の試験部隊に出張した経験も。

  • 資材
    川原 健士
    航空機事業部 航空機資材部
    ※所属は当時のもの

    搭載機器の開発製造会社選定から、それらの開発費・製品費の価格決め、開発日程管理、不具合対応まで、搭載機器の全てを担当。

FLOW

  • 営業・受注

    航空機の開発となると莫大な時間と設計変更を要するため、契約を開発フェーズごとに複数回に分けて締結。契約ごとにお客さまと仕様やスケジュールの調整を行う。

  • 設計

    安全性を最優先に、試験で確認しながら設計を進める。開発要素が多岐にわたるため試験の量も膨大で、試験結果が出るたびに設計を修正、お客さまとの調整を実施する。

  • 製造

    開発日程短縮のため、設計、試験と並行して、搭載機器の開発、材料、部品の手配を行い、関連部門が一体となって製造を進める。

  • 試験

    安全性確認のためには試験評価が必須。試験機を飛ばして評価するだけでなく、事前に地上で構造、各機体システムについて実機大の供試体を作り、徹底的に性能評価を行う。

  • 納品

    防衛省の開発では、納入するのは「試作機」。その後本格的な試験を行うため、納品は終わりではなく新たな「始まり」を意味する。達成感と、期待や不安が交錯。

INTERVIEW

航空機と船の両方の特徴を持ち、海面に離着水できる“飛行艇”――それがUS-2型救難飛行艇。
海難事故の救助活動や離島の救急患者の搬送を目的に、防衛省海上自衛隊に配備。世界に誇る航空機製造とは――

杉本
このプロジェクトは、防衛省の飛行艇を更新するという話から始まりましたね。従来のUS-1A型救難飛行艇の改良で、「機体としての安全性向上」と「救助者の輸送環境向上」が大きな要望でした。海難事故の救助活動という、特殊かつ極限状態を想定した機体。改良といっても全面見直し、検討の範囲が広く、実際に仕事として動き出すまでに時間がかかりましたね。自分たちの代が入社するまでに先輩が色々苦労をして、計画開始まで漕ぎ着けてもらったと聞いています。
川原
開発期間が長かったから、契約も細かく分けて7回にもなりましたね。契約、設計、お客さまとの調整をしながら次の契約の準備、という繰り返し。操縦性能確認、機内の装備配置確認、操縦システムの作動確認など、常に複数の試験が並行しており、みな大忙しでしたね。
杉本
試験ではトラブルはつきもの。1回で全て上手くいくことはほとんどないですね。理論ではうまくいくものが、その通りになることばかりでなく、設計の変更もよくありました。そのたびにトラブルシューティング、機器メーカーとの調整、新たな部品の手配。資材部にはかなり協力してもらいましたね。
川原
部品の調達には本当に走り回りましたよ。しかし、設計段階から資材部も一緒に取り組むことで、入手性の良い部品を選定することができたと思います。航空機は一つの故障で大きな事故につながる可能性があるので、価格だけでなく、技術や品質、これまでの実績など総合的な評価で装備品の開発先を決めました。このプロジェクトには各分野で、ものすごい人数が関わっていましたよね。
杉本
設計だけでも200人以上はいたと思います。大きい仕事だから専門ごとにチームを編成して、結局5つぐらいのグループに分かれて作業していました。その中でも担当ごとに専門性があって、若いメンバーでも「俺、任されているな」っていうやりがいはみんな持っていたと思いますよ。それに航空機はすべてを1社で作れるわけじゃない。国内の航空機メーカーが分担製造し、それぞれの技術を活かそうという気持ちがありました。
川原
私も資材部として搭載機器の開発費や製品費の価格決めをしました。下請けと言っても当社よりも規模の大きい会社との調整で、勉強になりましたし、先方の営業さんとの折衝は連日深夜まで続き、お客さまとの契約商議のときは徹夜もありましたね。精神的にも肉体的にも厳しかった。でも、この経験をしたから今はどんな困難も乗り越えられる自信がありますよ。
杉本
私も疲労強度の計算では試験評価まで関わりました。機体1機そのままの構造を使って飛行条件を模擬した試験を実施しました。何せ3mの荒海に着水する飛行艇なので、確実に安全性を確認しないといけない。試験にトラブルはつきものですが、次の試験も目前に迫っている。トラブルのときは会社の中を駆けずり回って対応しました。うちは部門間の距離が近くて、全員の意識を合わせやすい。お互いの気持ちを理解し合って、快く協力してもらえる環境がありがたかったですね。
川原
確かにスピード感がありますね。上司や先輩との距離感も近く、若手にいろいろ任せてもらえるし新入社員が抜擢されることもあります。この仕事では他社との横のつながりもたくさんでき、社内外に一気に人脈が広がりましたよ。そうして何年もかけ、いくつもの問題を一つひとつ解決してきたので、US-2型救難飛行艇の引き渡しのときは自然に涙が出ました。自分の子供がお嫁にいくような、そんな感覚。それと同時に、いろいろな苦労が達成感に変わりましたね。
杉本
機体が実際に飛んでいるのを見た瞬間は格別でした。構想から10年にもわたる開発なので、関わってきた部分がたくさんあります。段階的に試験で安全性を確認してきたから「安心感」はありましたよ。
川原
定期修理で工場に帰ってくるときはうれしいですね。よく帰ってきたなぁって、みんな自分の子供が帰ってくるみたいに思っています。機械なのに、生き物みたいに感じることもありますし。US-2型救難飛行艇の開発は、社内の多くの人や、他社とも一緒に“ALL JAPAN”の気持ちで力を合わせること、自分の成長がチームのためになるということを教えてくれました。
杉本
航空機は高度な技術力が必要で、スケールも大きい。そのような製品の中に「ここは俺が担当した」という部分を持てるのはうれしく、またやりがいもあります。US-2型救難飛行艇の開発はそれを感じることができたプロジェクトでした。

POINT

私たちの「挑み」

消防飛行艇の開発、製造により、世界中の山火事を消し、地球温暖化対策、CO2削減、環境に優しい企業を目指します。